非常用電源の目安が72時間と言われている根拠
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で亡くなった人の原因は、「圧死」の方が大部分(約3/4)を占めており、「焼死」の方も約1割でした。
国土交通省近畿地方整備局の阪神・淡路大震災の死因や生存率をまとめた「死者を減らすために」のデータによると、震災当日の1月17日の救出率は75%でしたが、翌日は24%、3日目が15%、4日目では5%と救出率は大きく低下しています。
一般的に人間が水を飲まずに過ごせる限界が72時間だと言われており、これらの点が根拠となって72時間の壁という言葉が生まれました。
阪神・淡路大震災の経験に学ぶ 第一章「死者を減らすために」
https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/daishinsai/1.html
東日本大震災をきっかけに内閣府が発表した東京都帰宅困難者対策条例(条例第17号)では
「事業者に従業者の一斉帰宅の抑制と従業者の三日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します。」と定められています。
東京都帰宅困難者対策条例
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kitaku_portal/1000050/1000536.html
72時間という考え方が定着したのはこの頃からで、「人命救助」出来る可能性が高い時間であることを意味します。
しかしながら度重なる大規模災害時においては停電継続時間は72時間で収束することは稀で、多くは1週間から10日程度、電力復旧に要しています。
長時間化する停電と大規模災害の頻発
72時間の壁の根本は「人命救助」ですが、近年実際に起こった停電として2018年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震では、日本で初めてとなるエリア全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)が発生し、道内全域において最大約295万戸が停電、ブラックアウトから概ね全域に供給できるまで45時間程度を要しました。
2019年9月には、台風15号によって千葉県を中心に鉄塔や電柱の倒壊によって、最大93万戸あまりが停電。完全に復旧するまで、約280時間かかりました。
残暑のなか多くの人がエアコンが使えず、長期間にわたる停電の影響で熱中症などで8名が死亡しました。
翌月10月の台風19号でも静岡県、関東甲信越を中心に約52万戸が最大4日間にわたり停電しています。
これら近年の被災からの学びを活かすため、電力インフラ・システムのレジリエンス(強靱性)を高めようとする改正法「エネルギー供給強靱化法」が2020年6月に成立しましたが、これだけで社会全体のレジリエンスを高めるには限界があり、電力消費者である民間の自発的な取り組みも重要になってきます。