非常用発電機の耐用年数
3.非常用発電機をメンテナンスする必要性
前述したとおり、非常用発電機の耐用年数は約30年ほどといわれています。
しかし、実際には10年ほどで故障し、使用できなくなる非常用発電機も少なくありません。
国の基準では、30年は稼働し続けられる非常用発電機ですが、メンテナンスを怠ると劣化を早めてしまいます。
そこで、非常用発電機の耐用年数を延ばすために覚えておきたいポイントを把握しましょう。
(1)メンテナンスによって耐用年数が延びる
メーカーや製造時期が同じ製品でも、使用方法や保管場所、メンテナンスの頻度によって耐用年数が異なります。
10年ほどで故障し使用できなくなる場合もあれば、国が基準としている30年も使用し続けられる場合もあるでしょう。
非常用発電機のような機械や機材は、当たり前ですが使用し続けると劣化します。
したがって、メンテナンスの方法や頻度によって、本当なら30年使用できる製品も10年ほどで使用できなくなってしまうのです。
逆にいえば、年に1回の点検や、蓄電池やバッテリー、エンジンオイルといった劣化しやすい部品を定期的に交換すれば、耐用年数を延ばせます。
(2)メンテナンスする必要性
非常用発電機は、エンジンで稼働し、発生した熱エネルギーを利用して発電する仕組みです。
自動車のように、エンジンによって動力を得る構造となっていますが、非常用発電機のエンジンは発電設備(ジュネレーター)を回転させる役割を担っています。
消防法や建築基準法によって設置が義務付けられている大型施設にある非常用発電機のエンジンは、ほぼディゼールエンジンです。
ディゼールエンジンは単純な構造をしているため、燃焼室で軽油を燃やしきれず、カーボンが発生しやすくなっています。
発生したカーボンは、燃焼室や排気口周りに付着するため、メンテナンスを怠ると始動不良を起こしたり、エンジンが急に止まったりする可能性があるでしょう。
非常用発電機のメンテナンスは、耐用年数を延ばすだけでなく、正常に稼働させるために必要です。
(3)メンテナンスを怠る危険性
非常用発電機は、高速道路や自動車道のほかに、マンションや学校、病院など多くの人がいる施設に設置してあります。
非常事態に重要な役割を担う非常用発電機ですが、何かしらのトラブルによって作動しなかった場合、被害を拡大する恐れがあるでしょう。
災害時にエレベーターが停止した場合、非常用発電機が作動しないと閉じ込められる可能性があます。
火災時に停電し、スプリンクラーへの電気供給ができなかった場合、消火できず被害がさらに大きくなる可能性もあるでしょう。
このように、非常用発電機のメンテナンス不足により二次災害が発生すると、場合によっては管理者や担当者に対して多額の損害賠償金が発生する可能性もゼロではありません。
非常用発電機のメンテナンスや修繕は、専門業者に依頼し、緊急時に正しく作動できる状態を保つ必要があります。
(4)メンテナンス費用を削減する方法
年次点検の際に、消耗品を計画的に交換すればメンテナンス費用を削減できます。
具体的には、年次点検時に消耗品も交換しれば、作業員の人件費や交通費のコスト削減が可能です。
たとえば、設置した1年目にエンジンオイルとオイルフィルターの交換をし、2年目に冷却水と燃料フィルターを交換。
オイルとフィルター、冷却水を2年ごとに交換し、6年に1度の交換が必要な蓄電池や燃料、ホース類やベルト類を5~7年目のメンテナンスに計画します。
電圧測定や温度測定、警報試験といった総合点検はメンテナンス時に必ずおこなうため、機器が故障する前に予防対応が可能です。
4.非常用発電機に欠かせない負荷試験
非常用発電機は、負荷試験(負荷運転)も必要となります。
負荷試験は、30%以上の負荷を非常用発電機に発生させるため、実際に非常事態が起こった場合に近い運転性能を確認できる点検方法です。
試験を実施すれば、想定外の作動トラブルや故障を未然に防げるでしょう。
負荷試験は比較的安い費用で実施でき、作業も短時間で終了します。
メンテナンス同様に、負荷試験を怠ると、二次災害が発生した際に罰せられる恐れがあるため、定期的な専門業者への依頼がおすすめです。
専門業者には通常点検や総合点検を依頼でき、エンジンの稼働をスムーズにする潤滑油や冷却水、フィルターといった消耗品の交換もしてもらえます。
消耗品には、各メーターが推奨する交換時期があり、非常用発電機に使用している消耗品は使用頻度に関わらず経年劣化するため、定期的な交換が必要です。
消耗品の劣化は、非常用発電機の作動を鈍らせたり、事故を起こす原因になったりするため、注意しましょう。