消防法とは?
消防法の基礎知識
消防法とは、簡単に言えば「火災を予防しよう」「もし発生してしまっても被害を最小限にとどめよう」という趣旨の法律です。目的は、もちろん人の命や財産を守ること。消防法によって、多くの建物に消防設備の設置・点検が義務付けられているのは、火災による被害を最小限にとどめ、人の命や財産を守るためです。
消防法第1条
この法律は、火災を予防し、警戒し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。
消防法の改正
消防法は、時代背景や起こった災害などを受けて、たびたび改正が行われています。
・新宿区歌舞伎町のビル火災
平成13年9月、新宿区歌舞伎町ビル火災が発生しました。500m2程度の小規模なビルで発生したにもかかわらず、死者は44名にも上りました。この惨事を受けて消防法も改正。消防機関による立入検査・措置命令や罰則などが見直されました。
・長崎県大村市のグループホーム火災
平成18年1月、長崎県大村市の認知症高齢者グループホームで火災が発生し、入所者7名が亡くなりました。この惨事を受けて消防法も改正。火災発生時に自力で避難することが著しく困難な方が入所する社会福祉施設も、消防法の対象となりました。また、スプリンクラー設備などの設置基準も強化されました。
消防設備点検に関する条文
消防設備の設置、および定期的な点検については、消防法第17条で定められています。
・消防法第17条第1項
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従って、設置し、及び維持しなければならない。
防火対象物とされている施設・建物の関係者は、火災発生時に必要な消火・避難、その他、消防活動に必要とされる設備を政令で定める基準に従って設置し、維持する義務があります。
・消防法第17条第3項の3
第17条第1項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第8条の2の2第1項の防火対象物にあっては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあっては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあっては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
防火対象物とされている施設・建物の関係者は、いつ火災が発生しても消防用設備が確実に作動するよう、定期的に点検を受け、消防長または消防署長に報告を行う義務があります。
他の消防設備点検の初歩的な疑問
消防設備点検について
消防法では、消防用設備等を設置することが義務付けられている防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者)に、その設置された消防用設備等を定期的に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告することを義務付けています(消防法17条3の3)。
点検義務のある防火対象物は、必ず点検を実施しなければならず、点検をしたら「点検結果報告書」を作成し、防火対象物の所在地を管轄する消防署に提出する必要があります。報告書の提出などがない場合は、消防機関から指導を受けるだけでなく、罰則も設けられています。
消防設備点検の目的は?
消防設備は、いつ火災が発生しても確実・正常に作動する状態でなければならず、日頃から適切な維持・管理が行われている必要があります。そのため、消防設備点検は、万が一のときに消防設備がその機能・パフォーマンスを十分に発揮できる状態にあるかどうかを確認するという意味合いがあります。つまり、消防設備の正常な作動を確認するために行うのが、消防設備点検というわけです。
なお、消防設備は機械・機器の性質を有するものが大半なので、たまに作動させてあげることで機能の低下を防ぐという側面もあります。
消防設備ってどんな設備?
どんな設備が消防設備に該当するかは、「消防設備とは?」で解説しています。
消防設備の点検が必要なのはどんな建物?
どんな建物が消防設備点検の対象になるのかは、「消防設備点検が必要な建物」で解説しています。
消防設備点検の頻度は?
どのくらいの頻度で消防設備点検を行うかは、「消防設備点検の頻度・報告の頻度」で解説しています。
消防設備点検は誰がやるべき?
消防設備点検は、防火対象物の用途や規模によって実施者が以下のように定められています。
(1)延べ面積1,000m2以上の特定防火対象物(劇場、飲食店、店舗、ホテル・旅館、病院、地下街、デパートなど)
(2)延べ面積1,000m2以上の非特定防火対象物(共同住宅、学校、寺院、工場、事務所、倉庫など)で、消防長または消防署長が指定したもの
(3)屋内階段(避難経路)が1つの特定防火対象物(特定用途[不特定多数の者が出入りする場所]が3階以上の階、または地階に存するもので、直通階段が1つしかないもの[屋外階段などがあれば免除])
(1)(2)(3)に該当する防火対象物は、消防設備士または消防設備点検資格者が消防設備点検を行わなければいけません。(1)(2)(3)以外の防火対象物は、防火管理者などの関係者が消防設備点検を行うこともできますが、確実な点検を行うためには消防設備士または消防設備点検資格者に任せるのが望ましいでしょう。専門知識がなければ適切な消防設備点検を実施するのは難しく、設備の不備などに対処することも困難であるため、専門業者に委託するのが一般的です。
消防設備点検が必要な建物はどんな建物?
建物はその用途や規模によって、消防法で定められた基準に適合するように消防設備を設置し、定期的に消防設備点検を行い、点検結果を報告する義務があります。消防設備の設置・点検は、すべての建物に義務付けられているわけではありません。消防設備の設置・点検が義務付けられている建物は以下のとおりです。
なお、建物は用途によって「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」に分類できますが、特定防火対象物は消防設備点検のほか、施設の規模や構造などによっては「防火対象物点検」も義務付けられています。
特定防火対象物
特定防火対象物とは、万が一火災などが発生した場合に、大きな被害が発生するおそれがあり、人命に被害が及ぶリスクの高い建物です。百貨店やホテルなど不特定多数の人が利用する建物や、病院や福祉施設、保育園・幼稚園、養護学校など、円滑な避難が困難であることが予想される利用者の多い建物は特定防火対象物となります。特定防火対象物は特に安全性を高める必要があるため、消防設備の設置基準も厳しくなっています。
※番号は令別表第1の項番
(1) イ 劇場、映画館、演芸場または観覧場
(1) ロ 公会堂または集会場
(2) イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの
(2) ロ 遊技場またはダンスホール
(2) ハ 性風俗関連特殊営業を営む店舗その他これらに類するもの
(2) ニ カラオケボックス等
(3) イ 待合、料理店の類
(3) ロ 飲食店
(4) 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗または展示場
(5) イ 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
(6) イ 病院、診療所、助産所
(6) ロ 老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、乳児院、知的障害者施設等
(6) ハ 老人デイサービスセンター、老人福祉センター、保育所、通所による障害者支援施設等
(6) ニ 幼稚園、特別支援学校
(9) イ 蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの
(16) イ 上記の特定用途を含む複合用途防火対象物
(16-2) 地下街
(16-3) 準地下街
非特定防火対象物
非特定防火対象物とは、特定防火対象物以外の建物です。
※番号は令別表第1の項番
(5) ロ 寄宿舎、下宿、共同住宅
(7) 小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校の類
(8) 図書館、博物館、美術館の類
(9) ロ 特定防火対象物(9)イ以外の公衆浴場
(10) 車輌の停車場、船舶、航空機の発着場(旅客の乗降・待合の用に供する建築物に限る)
(11) 神社、寺院、教会の類
(12) イ 工場、作業場
(12) ロ 映画スタジオ、テレビスタジオ
(13) イ 自動車車庫、駐車場
(13) ロ 飛行機または回転翼航空機の格納庫
(14) 倉庫
(15) 上記『特定防火対象物』『非特定防火対象物』の用途に該当しない事業所
(16) ロ 特定防火対象物(16)イ 以外の防火対象物
(17) 重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡、重要美術品として認定された建造物