「非常時」に使える「非常用発電機」のメンテナンス方法とは
「非常用発電機」が「非常時」に使えない…そんなことがあるのか、と思われるでしょう。原因の63.5%がなんとメンテナンス不良や燃料不足。停電対策は命と資産を守るためのものです。停電で損害を出さないためにやるべきことをお伝えします。
過去の災害による停電事例
主に当社が活動範囲としている中国地方と中部地方で起こった停電の事例をご紹介します。
豪雨と強風によって樹木や飛ばされたものが電線に接触したり、飛んできたものが電線に接触、電柱が折れたり雷によって設備が損傷するといった、「よくある」停電理由に加えて、発電所や変電所の浸水によって広範囲の停電が引き起こされました。
ハザードマップ内に自社が入っていなくても、供給元になる発電所や変電所のトラブルによって停電が起こる可能性があります。
もしも停電が起こった際に非常用発電機が動かなければ、医療現場では入院中の患者さんの生命維持に支障が出ることでしょうし、夏場であれば生鮮食品を扱っている企業で大損害が出てしまうことにもなるでしょう。
いざという時に備えて停電対策をしておくことで、被害を最小限に抑えましょう。
中国地方
・豪雨災害 2018年(平成30年)6月28日~7月8日
・中国電力管内での最大停電戸数59,000戸
・最長7月13日まで停電
・電気設備被害
①電柱(倒壊・折損等):848本
②高圧線(断・混線等):237径間
③鉄塔(敷地土砂流出):34基
④配電用変圧器(浸水):5台
中部地方
・豪雨災害 2020年(令和2年)7月3日~8日
・中部電力管内での最大停電戸数3,840戸
・最長7月15日まで停電
・電気設備被害
①電柱(折損・流出・転倒・傾斜):50本
②水力発電所
下原ダム:洪水吐ゲート損傷
小坂ダム:洪水吐ゲート損傷
下切発電所:建屋内浸水
根方発電所:建屋内浸水
③77kV送電線:1条断線
災害時の非常用発電機不始動・停止原因
東日本大震災時に非常用発電機の稼働に関するデータが、総務省消防庁より公表されています。
不始動・停止する原因は、メンテナンス不良が23台、燃料切れが125台と原因の63.5%が事前の点検不足によるものでした。
更に、津波や地震を原因とするもの(63件)を除いて考えた場合、87%以上が事前の点検不足・メンテナンス不良が原因となります。
逆に言えばこれらを点検・メンテナンスを適正に行なっていれば、非常用発電機はほぼ問題なく動くということでもありますね。
停電に備えてやるべきこと
- 燃料補給
- 毎年下記3種類の点検のうち、どれか1つを選択して実施
・予防的保全策
・負荷試験
・内部観察 - 6年に1回下記2種類の点検のうち、どちらか1つを選択して実施
・負荷運転
・内部観察
①燃料補給は点検とは別に忘れず行なっておきましょう!
設備に故障がなくても燃料がなくては発電機は動いてくれません…!
②点検3種のうち、最も行ないやすいのは「負荷試験」ではないでしょうか。これは自動車で言うところの試運転のようなもので、下記のような特徴があります。
メリット
・実際に運転した際の動作を確認出来る
・作業時間は2時間程度(低圧の場合)と短め(他点検の1/3程度)
・作業中に災害や停電が起こっても即座に復旧可能
・最も安価
デメリット
・停電が必要なため、営業時間中には行ない難い(夜間になりやすい)
・負荷運転時の騒音により、近隣住民からクレームが発生する可能性がある
もし近隣住民とのお付き合いを考えて、安価で手間のかからない負荷試験を諦めようとしている方には、代替手段として「模擬負荷試験」というものがありますので、「負荷試験」と比較してのメリット・デメリットをご紹介いたします。
メリット
・停電不要なため、営業時間中にも行ないやすい
・負荷運転時の騒音が少なく、クレームになりにくい
デメリット
・負荷試験より高額になる場合がある
最後に
停電時に思いがけないトラブルで損害を出さないために、法的義務を踏まえてコンプライアンス強化のために、お客様に安心してサービスを受けてもらうためにと様々な理由はあるでしょうが、非常用発電機の点検・メンテナンスをすることで得られるメリットは多いです。
当社でも電気の保安点検を行なっており、消防法とは別ですが非常用発電機の点検も同時に行なっております。故障や燃料不足等を発見した際には速やかに報告し、非常時の備えをするよう助言させていただいておりますので、ぜひお問い合わせください。