自家発電設備とは?
文字通りに「自分のところで電気を発電して使用する」為の設備になります。
以前にありました東日本大震災では、電力会社の発電量不足などの要因により各地で計画停電があり、この自家発電設備が注目されました。
自家発電設備には常用型と防災型(非常用)で区分されて、消防用設備等で用いられている一般的な自家発電設備は防災型で専用の外箱(キュービクル)に原動機(エンジン)と発電機が設置されているキュービクル式の自家発電設備が多いと思います。
この他に不燃専用室(発電機室など)に設ける原動機と発電機が露出しているもの(オープン型自家発電設備)もあります。
この自家発電設備がどう動くのかというと、常時商用電源を受電している自家発電設備の制御装置が停電を検知してキュービクル内(又は不燃専用室内)のエンジンが自動起動してエンジンと直結している発電機を回して発電し、接続されている負荷に電力を供給するという仕組みになっています。
種類と大きさなどについて
良く工事現場などでみかける可搬型の小さな発電機から、常設されている大きな自家発電設備までいろいろあると思いますが、種類としては原動機の種類で変わり、原動機がガソリンエンジン・ディーゼルエンジン・ガスタービンなどの種類がありますが、小型の可搬型の自家発電機には家庭用のカセットボンベを燃料とするエンジン(本田技研工業株式会社様のエネポという製品)などもあり多岐にわたります。
また大きさでは上記したエネポ(小型のスーツケースくらいのおおきさ)から4トントラックの荷台くらいの大きさのもの(筆者の感覚で)までいろいろあります。
エネポは100V発電で0.9KVAですが、4トントラックの荷台くらい大きい自家発電設備は6600V発電で400KVAの容量があるものになります。
メーカーにもよりますが、大きな防災用自家発電設備では6600V発電で2000KVAの容量があるそうです。
あと、自家発電設備には停電から電圧確立及び負荷投入までの時間により普通型と即時型の2種類があり、即時型は上記時間が10秒以内で、普通型は上記時間が40秒以内となっています。
この他に定格出力で連続1時間以上運転できるものを長時間型といい、普通型は定格出力で1時間運転できますが、長時間型は1時間を超えて運転することができます。
負荷について
自家発電機や自家発電設備に接続されていて、発電機が作る電力(起電力)を使用するものを負荷とか負荷機器と言います。
この負荷には、可搬型の小型発電機なんかだと投光器や業務用掃除機などを接続して電源の無い場所や停電環境下で作業をするために使用しますが、常設の自家発電設備だとこの接続されている負荷は決まっていて、非常で使用するもの(消防用設備等や非常照明、非常電源など)に限定されているのがほとんどになります。
主なものだと消火栓とかスプリンクラーのポンプや排煙機、病院の手術室などにある非常電源(赤いコンセントで、停電しても自家発電設備の電力を使用できる非常回路)などが該当します。
また自家発電設備には大きさにより発電できる容量(100KVAとか)が決まっていますのでそれ以上の負荷は接続できません。(定格発電量を超えると保護装置により自家発電設備が止まったりブレーカーが落ちる)
一般的には負荷の容量の3倍の容量を選定するみたいです。(負荷が30KVAなら自家発電設備は100KVAとか)
それはポンプや排煙機に接続されているモーターは、起動時に定格運転時のおよそ3倍の電力を使用するためで、このモーターが起動した際の起電力に対応するために上記のような余裕のある容量の自家発電設備を選定するということになります。
たしかに消火栓ポンプなどを起動した際には一瞬ですが電流計が振り切れるくらいの電流が流れますのでおよそ3倍というのもうなずけます。
原動機の種類による違いについて
上記で原動機にはガソリンエンジン・ディーゼルエンジン・ガスタービンなどがあると説明させていただきましたが、ではこれらの原動機によりメリット・デメリットはどうなのでしょうか?
消防用設備等の非常電源に良く用いられるディーゼルエンジンとガスタービンでの違いをお話させていただきます。
ディーゼルエンジンの場合
メリット
- 小型のものから大型のものまで種類が豊富
- 燃料単価が安い
- 発電効率が良い
- メンテナンスが容易
- 本体が比較的安価
デメリット
- 排気ガスの煙が多くでる(負荷運転時は特に出る)
- 振動や騒音が大きい
- 冷却装置(ラジエーターなど)が必要
- 無負荷運転で未燃焼物質(スラッジ)が生成されやすい。
- 未燃焼物質除去の為に定期的な負荷運転が必要
ガスタービンの場合
メリット
- 振動や騒音が少ない
- 排気ガスの煙が少ない(ほぼ透明)
- 未燃焼物質(スラッジ)が生成されない
- 冷却装置不要
- 省スペース
- 負荷運転不要(消防法上)
デメリット
- 同じ規格(出力)のディーゼルエンジンのものより本体価格が高い
- 発電効率が悪いため燃料単価が高い
- 部品が非常に精密なのでメンテナンス費用が高額
- 排気ガスの温度が非常に高温なため可燃物があると燃える
まとめ
消防用設備等で用いられる自家発電設備は消火栓やスプリンクラーなどが設置されている場合に非常電源として設置義務があります。
ですが、大きい工場などでは非特定防火対象物なのに自家発電設備が設置されていて、防災用(負荷が消防用設備等)なのか非常用(負荷が工場の生産ラインなど)なのか微妙なものがたまにあります。
ですので設置届などを確認して負荷がどうなのかを確認しておく必要があります。
また自家発電設備の設置基準には建築基準法によるものと消防法によるものがありますので間違えないようにしたいものです。