企業防災の具体的な取り組み
企業防災には、「防災」の観点からと「事業継続」の観点からという2種類のアプローチがあることを紹介しました。次は、それぞれのアプローチで必要な具体的な取り組みを紹介します。
具体的な取り組みの前に、以下の手順を踏むことが必要です。
- 過去の自然災害による被害を調べる
- 災害に対する対策方法を知り、地域に合った対策は何が必要かを調べる
- 上記を元に自社の災害対策を作成する(作成済みであれば定期的に見直す)
上記に必要な資料は、国土交通省、消防庁、気象庁、警察庁、地方自治体、大学や団体などの調査結果、研究、災害対策マニュアルなどを参照します。
「防災」の観点からの具体的なアプローチ
防災からのアプローチでは、どのような災害があるか想定し、さまざまな準備・対策を行うことが重要です。
- 被害に遭う可能性のある災害を想定し、必要な災害対策の立案とマニュアル化
- 必要量の食料や医薬品などの備蓄(従業員および顧客分)の準備
- 必要な耐震補強策の実施
- 出火防止、看板の落下防止、窓ガラスの飛散防止など必要な二次災害の防止策の策定
- 自社内への防災計画の周知・啓発と訓練の実施、および自治体と災害時の支援協定の締結や地域の防災訓練への参画
- ホームページなどで防災への取り組みの内容を発信
「事業継続」の観点からの具体的なアプローチ
事業継続からのアプローチでは、まず事業に著しいダメージを与える重大被害を想定し、継続すべき重要業務を絞り込みます。そして、重要業務の継続に不可欠で、業務の復旧の制約となる重要な要素(ボトルネック)を洗い出し重点的に対処することが必要です。
- 緊急時の経営に関する意思決定ルールの作成
- 迅速に従業員、顧客の安否を確認できる体制の構築
- 重要データのバックアップと重点業務を代替できるバックアップシステムの整備
- 既存オフィスが使えないときに備えたバックアップオフィスの確保
- 上記を含み、誰が何を、どこで、どこまで、どのように実施するかの「事業継続計画(BCP)」の作成と周知・徹底
企業防災の事例
実際に防災と事業継続に対する取り組みを行ったことで、事業の早期復旧に成功した企業の事例を紹介します。
複数のスーパーマーケットを経営する会社の例
新潟県にある会社は、2004年に起きた新潟県中越地震で県内22店舗が被災し、そのうち3店舗は壊滅的な被害を受けたことから閉鎖を余儀なくされました。この反省を生かし、「被災地で需要が高い商品の洗い出しと調達先の整備」「第二物流センターの設置」「地震計に連動した緊急停止装置の設置」などの取り組みを実施。この結果、2007年の新潟県中越沖地震では7店舗が被災しましたが、4店舗が当日に営業再開でき、翌日にはさらに2店舗、翌々日には残りの1店舗も営業再開ができました。防災と事業継続の両方の取り組みにより、わずか3日で被災した店舗のすべてで営業再開ができ、自社の損失を軽減させるとともに地域社会への貢献も果たしました。
自動車部品用金型メーカーの例
同じく新潟県にある自動車部品用金型メーカーは、「設備復旧手順のマニュアル化」「パソコンを使った知識の共有化」「毎月開催の全社勉強会での周知徹底」などを行うことで、いつ災害が起きても、従業員が自ら考えて動けるように努めていました。その結果、震度6強の地震に見舞われたときにも、工作機械の点検整備がスムーズに行え、わずか1日の遅れで製品を出荷できました。
電子部品メーカーの例
熊本県の電子部品メーカーは、「自然災害を想定した日々の訓練」「必要物資の備蓄」などに取り組んでいました。そのおかげで、2016年の熊本地震で被災しましたが、使用する設備がデリケートな精密機器であったにもかかわらず、予定よりも早い2週間で生産を再開できました。
「事業継続計画(BCP)」の作成と防災用品の準備が大切
紹介した事例で分かるように、平時からどれだけ災害に備えた準備をしておくかで災害時の復旧速度が大きく異なります。企業として従業員、顧客の安全を守り、企業自身を守るためには「事業継続計画(BCP)」の作成と食料や防災用品の備蓄は欠かせません。防災用品の備蓄には、あらゆる防災用品をすべてまとめて調達できるサービスを利用すると便利です。