雑居ビルにいるとき火災が発生したら?命を守る避難方法のポイント
飲食店やクリニックなど、複数のテナントが入居する雑居ビル。
誰もが足を踏み入れることができる場所です。
私たちも、たまたま居合わせた雑居ビルで火災に巻き込まれる可能性は、皆無ではありません。
雑居ビル火災のリスクとは?被害が拡大しやすい原因は?
過去に発生した雑居ビル火災では、多くの方が逃げ遅れるなど、甚大な被害が報じられています。雑居ビル火災で、被害者が多くでる傾向にあるのはなぜでしょうか
雑居ビル火災において被害が大きくなりやすい一因として、ビルの防火管理体制があげられると思います。
小規模な雑居ビルでは、防火管理者が常駐しておらず防火管理体制が整っていない場合や、火災報知器や消火器のメンテナンスが行き届いていないケースもあります。
過去の雑居ビル火災では、通路や階段に各店舗の物が置かれて防火扉や非常階段をふさいでいたり、排煙窓がすぐに開けられない状態になっていたりしたことがありました。
また、ビル全体の避難訓練が適切におこなわれていなかったことなども火災の被害を拡大させた原因だと指摘されています。
雑居ビルは、入居する店舗ごとにオーナーが異なるので、防火に対する認識を統一して、防火管理を徹底するのが難しい場合があるのです。雑居ビル火災では、ビル自体に安全に避難できる体制が備わっていないと、命に関わるということですね。古い雑居ビルですと、建物構造の問題もあります。
建築基準法では、火災発生時に速やかに避難できるよう、地上階への直通階段を2つ以上設置しなくてはいけない「二方向避難」が義務付けられていますが、この法律が定められたのは1969年(昭和44年)です。
それ以前に設計されたビルは、1つしか直通階段がない場合もあり、過去の雑居ビル火災では、1つしかない階段に人が殺到したり、階段に煙や火が回って逃げ道を失ったりしたことなどが問題になりました。
ご自身がよく足を運ぶ場所があるなら、いつごろ建てられたビルなのか、非常階段がどこにあるのかを見ておくと良いでしょう。
雑居ビル火災が発生!そのとき命を守る行動は?
火災が発生した場合、まず火災報知設備の非常ベルが鳴ったり、非常放送が流れると思います。その段階で求められる行動を教えてください。その場から安全に避難することを考えなくてはなりません。
火災報知設備の警報が鳴っても「まさか本当に火事が起きるわけがない」「何かの間違いだろう」と思いがちです。
このような心理状態を「正常性バイアス」と言いますが、自分の身に異常事態が起きたことを受け入れず、なんとか正常範囲内の出来事と考えようとする心理です。
もし火災が実際に起きていたなら、「正常性バイアス」の影響から避難が遅れたり、状況を理解した途端にパニックになったりすることも考えられます。
火災報知設備など異常を知らせる警報が鳴ったら、様子見をせず、避難に備えてください。
どこで火災が起きたのかなど、状況もわからず慌てて避難するのはかえって危険ですが、立ち上がったり、出入口のほうに少し移動したりするだけで、避難の初期行動がスムーズになり、命が助かる確率が高まります。
実際に雑居ビル火災に巻き込まれて避難するときは、どのタイミングで行動を起こせば良いでしょうか?
火災発生や避難指示が確認できたら、すぐに避難を開始してください。
雑居ビルの2階以上のフロアにいる場合は、階段を使って避難します。なるべく煙を避けながら、下の階に向かって移動してください。
避難の際は、なるべく身軽に。
大きな荷物は避難の妨げになりますので、無理に持ち出さないほうが安全です。
一方、状況確認や外部への連絡のために、携帯電話やスマートフォンは持っていると安心ですね。
ハイヒールを履いている女性は、割れガラスなど足元の心配がある場所以外は、裸足で移動したほうが安全な場合があります。移動に時間を要したり、転倒したりするとかえって危険です。
火災の避難訓練では、「かがんで、ハンカチやマスクで鼻と口を覆って移動する」と教えられます。
煙の特性として、天井のほうにたまりやすいので、下の空間は空気が残って呼吸がしやすく、視界も確保できるため、かがんだ姿勢は理にかなっています。
ハンカチやマスクは、有毒ガスは通してしまいますが、微粒子やすすなどを吸い込むのを防ぐことはできます。
また、万が一停電などで視界が悪いときは、壁に片手をついて歩きながら出口を探すのも一つの手です。
火災が発生してから、煙が充満するまでには、ある程度時間を要します。
安全に避難できる、煙が回っていないうちに行動を起こすことが最優先です。
雑居ビル火災でも、火災の初期に速やかに避難行動を起こせば、安全に避難できる場合が多いのです。落ち着いて、素早く行動しましょう。
雑居ビル火災で階下に逃げられないときの避難方法
階下に向かって階段を使って避難するとのことですが、すぐ下のフロアが燃えていたり、炎や煙に阻まれて階段を使えなかったりしたら、どうしたら良いでしょうか?
ビルから脱出できないと判断したときは、火災が発生した場所から、少しでも離れる必要があります。
少しでも安全な場所に移動して、救助を待ちましょう。
扉や壁で区切られ、火が回っていない・煙があまり入ってこない空間を探してください。
火災発生階よりも上の階に移動したり、屋上に移動したりして待機する方法もあります。
「上に逃げたら、もう助からない」というイメージを持っている方もいるかもしれません、そんなことはありません。
雑居ビルの火災でも、火元となったフロアは焼失しても、ほかの階は無事ということはあります。
重要なのは、「火から遠ざかること」、そして「煙を吸わないようにすること」。
煙は上にのぼるので、上階に移動する際は、煙に含まれる一酸化炭素などの有毒ガスに注意が必要です。
窓があって開けることができれば、新鮮な酸素を吸うことができますし、部屋から煙を排出することができます。
消防車が到着してから、消火、救助活動が開始されるまでは10分~15分程度が一般的。
火を避けて、呼吸を確保することができれば、消防が到着するまで持ちこたえることができます。
ビルから出られなくても、助かる道があるのですね!悲観せず、落ち着いて行動することが大切だとわかりました。
雑居ビル火災で怖いのは、火や煙はもちろんですが、パニックも二次被害を招きます。
煙で視界を奪われたり、停電で真っ暗になったりすれば、誰でも冷静ではいられません。
しかし、落ち着いて周囲を見回して状況を判断する心のゆとりがあれば、雑居ビル火災でも助かる確率が高まります。
例えば、初めて行った雑居ビルで避難する方向がわからなくても、避難誘導灯をきちんと見れば、避難口までのルートを示していることがわかります。
避難誘導灯が示すとおりに進めば、避難できるはずです。
また、区画化するための防火扉を「行き止まりの壁」と勘違いしてしまうことがありますが、防火扉は人の力で開けられます。
防火扉の向こうは煙や火が遮断されていて、安全な空間が広がっているのに、パニックで引き返してしまうような事態を避けられるでしょう。
雑居ビル火災で命を守るために日ごろからやっておくべきこととは
冷静さや心のゆとりが命を守ることは理解できます。でも、ほとんどの方が火災のような非常事態には慣れていないので、パニックになってしまいそうです。
「もしもここで火災が起きたら」を考える習慣をつけてみてください。
雑居ビルを訪れたときなら、避難口や避難階段がどこにあるかを見ておくだけでも、「いざというときはこっちに逃げればいいのだな」と認識することができます。
一方向しか非常階段がないビルなら、階段以外の避難設備はどうなっているのか、どうやって避難するのがスムーズかなどを、シミュレーションしておくと良いでしょう。
火災が発生したときの避難イメージがあると、いざというときも落ち着いて状況判断ができるはずです。
雑居ビルに限らず、ショッピングモールや駅ビルなど、訪れた先々で防災設備や避難口の場所を観察したり、どう避難するかをイメージしたりする習慣をつけるのがおすすめです。
雑居ビル火災に巻き込まれたとき、ひとりでも多くの方が助かるために、自分自身ができることはありますか?
火災や地震などの災害では、自分自身を守る「自助」、他者と協力する「共助」、消防署や自治体などによる「公助」の3つの考え方があります。
雑居ビル火災においても、まずは「自助」として落ち着いた避難行動が大切です。
冷静に判断して避難する心のゆとりがあるなら、近くにいる人を一緒に避難口へ誘導したり、パニックにならないよう声かけしたりする「共助」もできるのではないでしょうか。
すべて自分だけで行おうとせず、周りに声をかけて行うとよいでしょう。
出火した場所の近くにいたら、消火器で初期消火するなどの協力も考えられます。
ただし、消火器も扱い慣れていないとなかなか火を消せないものです。
少しでも火が大きくなってきたら、無理をせず、避難を優先してください。
雑居ビルの火災では、とにかく安全に避難することが最優先。
まずは自分の命を守ることを第一に考えてくださいね。