防火管理者の役割と消防法での罰則・罰金

防火管理者の選任はお済みですか?このブログでは防火管理者の役割や義務、選任が必要なケース、そして防火管理者になる方法や消防法での罰則・罰金について解説します。

防火管理者とは?

防火管理者とは、建物や施設における火災予防と安全管理を担当する重要なポジションです。

消防法に基づいて指定され、火災のリスクを最小限に抑え、火災が発生した場合に効果的な対応をする役割を果たします。

防火管理者の役割

防火管理者の主な役割は、火災予防と安全管理です。具体的には、

  • 火災予防策の策定と実行
  • 消防設備の点検、保守、修理
  • 火災発生時の緊急対応と避難誘導
  • 住民や従業員への火災の危険性に関する教育
  • 防火計画の策定と実施
  • 消防訓練の計画と実施
  • 消防署との連絡と協力

防火管理者は、火災発生時に速やかな対応を行い、火災の拡大を防ぐために訓練されています。

また、建物や施設内の消火設備の点検や保守も担当し、火災の危険を最小限に抑える役割を果たします。

これらの義務を遂行しない場合、消防法に基づいて罰則が科されることがあります。
防火管理者は、火災予防と安全管理において専門的な知識と経験を持つことが求められます。

防火管理者と防災管理者の違いとは?

防火管理者は火災による被害の軽減や防止を役割としており、

防災管理者は火災意外の災害(地震、風水害、テロなど)の被害の軽減や防止を役割としている違いがあります。

それぞれ、選任が必要な建物規模や、資格条件が異なります。防災管理者になるためには甲種防火管理者の資格が必要です。

防火管理者を選任する義務がある場合とは?

防火管理者の選任義務は、特定防火対象物と非特定防火対象物の2つのケースで異なります。それぞれのケースについて詳しく説明します。

特定防火対象物の場合

特定防火対象物は、不特定多数の人が出入りする建物のことです。

これらの施設は安全性が重要であり、防火管理に特別な注意が必要な建物です。

特定防火対象物の例

特定防火対象物の例としては、ショッピングモール、ホテル、病院などが挙げられます。

  • 劇場、映画館、演芸場又は観覧場
  • 公会堂または集会場
  • キャバレー、カフェ、ナイトクラブその他これらに類するもの
  • 遊技場またはダンスホール
  • 性風俗関連特殊営業を営む店舗
  • カラオケボックス等
  • 待合、料理店その他これらに類するもの
  • 飲食店
  • 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場
  • 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
  • 病院、診療所等
  • 有床の福祉施設(特別養護老人ホームなど)
  • 老人デイサービスセンターなど
  • 幼稚園または特別支援学校 
  • 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの
  • 複合用途防火対象物のうち、その一部が特定防火対象物の用途に供されているもの
  • 地下街
  • 準地下街 

特定防火対象物の場合の防火管理者の選任条件

その建物が特定防火対象物の場合に、

  • 収容人数:30人以上

なら、防火管理者を選任する必要があります。

さらに、

  • 建物全体の面積が300㎡未満の場合:甲種 または 乙種 の防火管理者の選任が必要
  • 建物全体の面積が300㎡以上の場合:甲種防火管理者の選任が必要

となっています。

非特定防火対象物の場合

非特定防火対象物は、消防用設備等の設置基準が厳しい建物分類のうち、特定防火対象物に該当しない施設や建物です。

非特定防火対象物は特定の人、つまり決まった人しか出入りがない建物です。

決まった人しか出入りしないとしても、以下の対象物の例を見ても分かる通りこれらの施設も安全性が重要であり、防火管理に特別な注意が必要な建物です。

非特定防火対象物の例

非特定防火対象物の例としては、学校や工場、倉庫などが挙げられます。

  • 寄宿舎、下宿または共同住宅
  • 小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学など
  • 図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの
  • 蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの以外の公衆浴場
  • 車両の停車場または船舶若しくは航空機の発着場
  • 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
  • 工場又は作業場
  • 映画スタジオまたはテレビスタジオ
  • 自動車車庫または駐車場
  • 飛行機または回転翼航空機の格納庫
  • 倉庫
  • 各項に該当しない事業場
  • 複合用途防火対象物のうち、その一部が特定防火対象物の用途に供されているもの以外の複合用途防火対象物
  • 重要文化財など
  • 延長50m以上のアーケード
  • 市町村長の指定する山林
  • 総務省令で定める舟車

非特定防火対象物の場合の防火管理者の専任条件

その建物が非特定防火対象物の場合に、

  • 収容人数:50人以上

なら、防火管理者を選任する必要があります。 さらに、

  • 建物全体の面積が500㎡未満の場合:甲種 または 乙種 の防火管理者の選任が必要
  • 建物全体の面積が500㎡以上の場合:甲種防火管理者の選任が必要

となっています。

防火管理者になるのに必要なこと

防火管理者になるためには条件を満たすことや講習を受講することが必要です。

防火管理者の要件

一般財団法人 日本防火・防災協会によると

  1. 防火管理業務を適切に遂行することができる「管理的、監督的地位」にあること
    ※この要件は、防火管理者に選任されるときの要件であり、防火管理者講習を受講するための要件ではありません。
  2. 防火管理上必要な「知識・技能」を有していること(防火管理講習修了者、学識経験者等
    ※「知識・技能」は、学識経験者等を除き、一般的には「防火管理講習」の課程を修了することにより得られます。
    ※この「講習修了資格」、講習種別によって「甲種」と「乙種」とに区分されます。甲種防火管理講習修了者はすべての防火対象物で防火管理者に選任できますが、乙種防火管理講習修了者は、防火管理者に選任できる防火対象物が、比較的小規模なものに限られています。

(引用元:一般財団法人 日本防火・防災協会 防火・防災管理講習)

上記が要件となっています。

甲種防火管理者と乙種防火管理者の違い

甲種防火管理者

甲種防火管理者は、用途や規模、収容人員に関わらず全ての防火対象物で防火管理者になることができます。

乙種防火管理者

乙種防火管理者は、選任できる防火対象物が、小規模なものに限定されています。

区分甲種防火対象物乙種防火対象物
用途老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホームなど(①)①以外の特定防火対象物非特定防火対象物①以外の特定防火対象物非特定防火対象物
建物全体の延べ面積0㎡以上300㎡以上500㎡以上300㎡未満500㎡未満
建物全体の収容人員10人以上30人以上50人以上30人以上50人以上
選任資格甲種防火管理者甲種防火管理者甲種防火管理者甲種又は乙種の防火管理者甲種又は乙種の防火管理者

防火管理講習

防火管理講習は、

  • 都道府県知事
  • 消防本部及び消防署を置く市町村の消防長
  • 総務大臣登録講習機関((一財)日本防火・防災協会)

が実施し、修了資格は全国共通のものです。

 防火管理講習|講習について|防火・防災管理講習|一般財団法人 日本防火・防災協会https://www.bouka-bousai.jp/hp/lec_info/guide_bouka.html#about

講習には、

  • 甲種防火管理新規講習(甲種防火管理者になれる)
  • 乙種防火管理講習(乙種防火管理者になれる)
  • 防火・防災管理新規講習(甲種防火管理者と防災管理者になれる)
  • 防災管理新規講習(防災管理者になれる)
  • 甲種防火管理再講習

があり、上記、日本防火・防災協会のサイトや東京消防庁などから講習の申込が可能です。

(甲種が必要なのか、乙種が必要なのかは上記の甲種・乙種防火管理者の定義をご参照ください。)

こちらの講習では講義やテストも用意されています。

防火管理者の資格の有効期限

防火管理者の資格に有効期限はありませんが、再講習が必要なケースがあります。

「収容人員300人以上の特定防火対象物」の甲種防火管理者のみ再講習の対象となり、新規の甲種防火管理者講習か再講習を受講した日以後における最初の4月1日から5年以内ごとに受講をす必要があります。

消防法違反による罰則・罰金の事例

防火管理者がその役割を適切に果たさなかったり、消防法に準拠しなかったりすると罰則や罰金が発生する場合があります。

防火管理者を選任・解任の届け出を怠った場合

防火管理者を選任べきなのにも関わらず、選任していなかった場合、そして解任をしていなかった場合に罰則規定があります。

盲点なのが、人事異動の際に新たに防火管理者を選任しなけれえばならないのに、選任・退任の申請が漏れてしまっていることです。その拠点にいない人が選任されていても有名無実となるので人事異動や入社・退社のイベントの際には注意しましょう。

罰則内容は、30万円以下の罰金または勾留です。

こちらは、消防署による「命令」という指導が入っていなくても対象となり、警察・検察の告発対象になります。

この「防火管理者を選任・解任の届け出を怠った場合」を受けてもまだ防火管理者の選任・解任がされない場合は、より厳しい「命令」という指導が入ります。

防火管理者選任命令違反

まずは所轄の消防署からの指導が入り、それでも選任されない場合は命令が下ります。

それでも防火管理者が選任されない場合は、より厳しい罰則となります。

罰則内容は、6か月以下の懲役、または、50万円以下の罰金です。

これらの消防法違反事例は、防火管理者がその職務を真剣に受け止めず、火災予防と安全管理を怠ることに起因します。

違反がある場合、罰則や罰金の対象となり、建物や施設の安全性が脅かされます。そのため、防火管理者の適切な選任と役割の遂行が非常に重要です。

防火、防災を組織の先頭にたって取り組めていますか?

組織として防火・防災の意識や対策は大切です。
防火管理者、防災管理者は率先して防火防災のリーダー的役割を担うことを期待されています。

しかし、届け出のみで形骸化してはいないでしょうか。

過去には、些細な油断から大きな被害を出した火災事例がありました。

自動火災報知設備を誤報が多いことを理由に切ったり、非常階段や避難経路に物を置いて避難の妨げとなったり、防火扉やシャッターに物を置いて火災や煙を流入させてしまうなど、ほんの少しの気づきと行動で防げた被害が過去の事例からも見て取れます。
 
消防防災博物館のウェブサイトで過去の火災や教訓などの資料を閲覧することができます。

 
 
防火、防災管理者として、

  • 消防設備の使い方を知って練習しておく(消火栓、排煙ボタン、防火シャッターなどまで)
  • 日ごろから防火の意識をもつ(気になる点は上司や本社本部に報告し改善する)
  • 非常階段や非常口、防火防煙シャッターなどの消防設備の周囲に障害物があれば片付ける
  • 店舗やオフィスの新入社員に通報、初期消火、避難といった訓練を速やかに実施する。

上記のようなことだけでも火災が減り、万が一発生してしまっても被害を最小限に抑えることができます。

ぜひ防火管理者、防災管理者以外の方でも防火防災に関心を持っていただき、ご自身が過ごす場所の安全を確保するため、常に意識をもって、取り組んでいただければ幸いです。

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