故障の原因と修理方法
非常用発電機のエンジンや発電機の内部はトラブルに直結するパーツであるため、何らかの異常を認めた場合には、直ちに使用を中止して点検・修理をする必要があります。
非常用発電機が不具合を起こした際に、考えられる故障の原因や対処法の一部についてトラブルシューティングとしてまとめました。
非常用発電機のトラブルシューティング
エンジンが作動しない
スターターが回らない、回っても回転が遅い
このような場合、以下の原因が考えられ、対処法は以下の通りです。
- バッテリーの放電
バッテリーの充電、バッテリー液の補充をしましょう。 - バッテリー端子の外れ
端子が外れていないか確認し、確実に取り付けしてください。 - アース不良
修理が必要です。 - スタータースイッチ・スターター不良
取替が必要です。 - リード線断線
修理が必要です。
スターターは回転するが始動しない
スターターは回転するが始動しない場合、以下のように対処してください。
- 燃料切れ
燃料の補充をしましょう。 - 調整レバー故障
修理が必要です。 - エア抜きの不良
エア抜きを正しく行ってください。 - 燃料フィルタの目詰まり
フィルタの清掃・交換が必要です。 - 燃料ソレノイドの不作動
ヒューズや燃料ソレノイドの点検、修理、交換が必要です。
エンスト・回転不足
エンスト・回転不足については、以下を参考にしてください。
- 圧縮もれ
エンジンの修理が必要です。 - 燃料フィルタの目詰まり
フィルタの清掃・交換、燃料フィルタエレメントの交換をしましょう。 - エア抜きの不良
エア抜きを正しく行ってください。 - エアクリーナーの詰まり
エアクリーナエレメントの修理・交換が必要です。
無負荷回転数が高すぎる
無負荷回転数が高すぎる場合、ガバナロットの調整不良が原因に考えられます。ガバナロットを短く再調整して対処してください。
無負荷回転数が低すぎる
逆に無負荷回転数が低すぎる場合も、ガバナロットの調整不良が原因になり得ます。今度は、ガバナロットを長く再調整しましょう。
また、エアが燃料配管に混入していることも原因に考えられます。エア抜きを行うことも試してみてください。
最高回転数にならない
最高回転数にならない場合は、無負荷回転数が低すぎるケースと同じく、ガバナロットの調整不良、エアが燃料配管に混入している原因が考えられます。
ガバナロットを短く再調整し、エア抜きも行ってみてください。
オーバーヒートする
オーバーヒートを起こしてしまう場合、以下のように複数の原因が考えられます。それぞれの原因に合わせて対処してみてください。
- エンジンサーモスタットの異常
エンジンサーモスタットの点検整備をしましょう。 - 冷却水切れまたは少ない
冷却水の点検と補充をしてみてください。 - ファンベルトの緩み
点検し、緩んでいた場合は調整しましょう。 - ラジエータのコアの目詰まり
ラジエータのコアを清掃して対処してください。
定格電圧にならない
定格電圧に達しない場合、メーカー相談になる場合もありますが、対処できる可能性もあります。
- 回転数が低い
回転数を上げることで解決する場合があります。 - 電圧計の不良
取替が必要です。
以下の場合は、サービス工場(メーカー)に依頼をしてみてください。
- AVR・VRの不良
- 回転整流器焼損
- ZNR焼損
- 発電機配線の焼損
負荷がかかると電圧が大きく低下する
負荷のバランスを調整することで解決する場合もありますが、以下の場合は、サービス工場(メーカー)に依頼をしましょう。
- AVR・VRの不良
- 回転整流器焼損
- 主界磁、励磁機界磁巻線焼損
ラジエーターの液漏れ
ラジエーター液とは冷却水のこと。ラジエーター液の適切な交換を怠ると、経年劣化によりラジエーター液が漏れ出てしまうことがあります。
ラジエーター液が漏れ出ると錆や腐食の原因となり、さまざまな部品の交換が必要となる場合も。また、漏れ出すことでラジエーター液がどんどん減っていきますから、冷却機能が落ちオーバーヒートを起こす危険性も考えられます。
そのため、ラジエーター液は1~2年毎に定期点検を行いましょう。ラジエーター液が漏れ出てしまっている場合は漏水箇所の特定と、ラジエーター液や部品の交換が必要です。
エンジンの冷却不足
エンジンの冷却不足が起こると、非常用発電機が異常を察知して緊急停止したり、オーバーヒートにつながる可能性があります。
エンジンは冷却水(ラジエーター液)によって冷却されていますが、冷却水が劣化すると冷却水配管が詰まる・冷却水ヒータが故障するといったトラブルが引き起こされます。そして絶縁不良などで正常にエンジンを始動できなくなる恐れがあります。
エンジンの冷却不足は非常用発電機の故障につながるため、速やかに修理や部品交換を依頼しましょう。
実際に起こった非常用発電機のトラブル
適切なメンテナンスがされていない非常用発電機は、故障や事故につながる恐れがあります。たとえば災害時に非常用発電機が稼働できず二次災害を引き起こすと、管理者は罰則を受けることも。
トラブルを防ぐためにも、点検の未実施や誤った方法で点検しないよう注意しましょう。ここでは、実際に起こった非常用発電機のトラブルを紹介します。
コンデンサの発火
負荷試験や点検を行っていない非常用発電機では、部品も劣化しています。事例では劣化したコンデンサから発火し、内部が焦げてしまうトラブルが発生。発火時に安易に手を加えると大事故や大けがを負う恐れがあります。劣化や寿命が切れたコンデンサは交換し、適切なメンテナンスを行う必要があります。
冷却水ヒータ損傷
冷却水の鮮度が落ちて腐ったことで、冷却水ヒータが損傷したケースがあります。劣化した冷却水に長時間浸ったヒータには付着物がこびりつき、配管が詰まるトラブル発生の可能性も。冷却水ヒータの劣化は絶縁不良にもつながるため、冷却水の交換を怠らないようにしましょう。
なお、冷却水が鮮度を保てるのは1~2年程度が目安。使用環境や気候によって異なります。
冷却水配管・サーモスタットの劣化・水垢・錆・腐食
冷却水が腐食すると水垢による配管の詰まりや錆、腐食を招き、サーモスタットの不具合などが発生します。
とくに冷却水劣化によってエンジン内部に錆が発生すると、正常に冷やせずエンジン内部が焼き付いてしまうことも。焼き付いたエンジンは正常な動作ができなくなりますから、非常時に電源を確保できないなどの二次災害にもつながります。さらに、焼き付いたエンジンの修理には高額な費用がかかります。
バッテリー(蓄電池)の膨張・水漏れ・電極板の錆び、劣化・結晶付着物
非常用発電機のバッテリー(蓄電池)は非常時にしか起動させないことがほとんど。そのため、いざ使用するときにバッテリーが上がってしまったケースも。また、バッテリーが膨張している・水漏れしている・電極版が錆びている・結晶付着物があるなどの場合は起動時に不具合を起こすこともあります。
バッテリーの交換には手配に時間がかかるため、定期的な点検や負荷試験を怠らないことが大切です。
外装の錆び・腐蝕
とくに屋外に設置している非常用発電機は、雨や雪などによって錆びやすくなります。外装に発生した錆を放置するとキュービクルに穴をあけてしまうこともあるでしょう。
なお、外装に錆が発生していない場合でも、内部には錆や不具合があったという事例もあります。外装に錆はないから内部も問題ないだろう…と放置してしまうと、非常時に稼働できないトラブルが発生します。