停電が起きると高齢者施設はどうなるか

2019年夏に上陸した台風15号は千葉県を中心に大規模な停電を引き起こしました。長期間の停電になった地域もありました。病院や高齢者施設では想定外の事態となり、職員が対応に追われました。ある施設では、熱中症によると見られる犠牲者も出てしまい、入院患者や施設の高齢者などの命を守るための備えの重要性が見直されています。

台風による被害規模

2019年の台風15号では下記のような被害が出ています。これからBCPを策定しようとする場合は、被害想定の参考にすることもできます。

  • 千葉県を中心に2200棟以上が全半壊
  • 93万戸が停電(厚生労働省によると、64の病院、155の高齢者施設が停電)
  • 停電の解消まで12日(電柱など送電施設が広い範囲で被害を受けたため復旧に時間がかかったため)

具体的な被害

エアコンが使えなくなり熱中症

非常用自家発電設備がない施設や、設備があっても備蓄燃料が少なかった施設ではエアコンが使えなくなりました。熱中症の症状を訴える人が相次ぎました。濡れたタオルで高齢の入居者の体を冷やすなどの対応をとった施設がありました。しかしながら、熱中症により82歳の女性が亡くなりました。

トイレの水が止まる

停電により、施設内のポンプが止まり断水したケースや、地域の浄水場が停止して水が送られてこなくなるなどの例がありました。それでも熱中症予防のために水分を摂ることを控えさせないようトイレの水を確保する必要がありました。断水した施設では湧水をポリタンクに汲み、それを施設まで運んでくるなどの対応に追われた例もありました。

情報連携の重要性

国や地域で電源車が派遣可能な状態にありましたが、通信が途絶したこと、また東京電力の復旧見込みが甘かったこともあり、電源車の要請が遅れたケースがありました。
熱中症で亡くなった方がいた施設も電源車を要請していましたが届いておらず、電源車が入所者が亡くなってから3日後のことでした。

国等の情報収集体制強化が求められるのと同様に、各施設にあるいはその施設を管理する組織には適切かつ迅速な情報収集・整理・発信の体制整備が求められています。

国等に迅速に助けを求められるようにするのと同時に、自家発電設備の充実などの自衛策を考える必要があります。

災害のときに中核になる災害拠点病院には自家発電設備の設置が義務付けられていますが、高齢者施設や一般病院にも自家発電設備の設置が望まれています。千葉の台風の例では停電解消まで12日かかった地域もありました。十分な期間の発電に必要なだけの備蓄が必要です。備蓄が難しい場合は、複数の入手ルートから燃料を確保できるような計画することが必要です。