ほとんどの中小企業は、BCP対策ができていない

全国各地で、台風や地震などによる自然災害が増えています。企業においては緊急事態に際し、損害を最小限に抑え、事業の継続や早期復旧を図ることは非常に重要です。有事の際の事業継続のため、BCPの策定を真剣に考える時期がきていると言えるでしょう。

BCPとは、災害などの緊急事態における事業継続計画(Business Continuity Plan)のことです。一般的な防災対策とは異なり、「事業の継続」という点について具体的な行動指針を示し、緊急時にも事業を中断せずに継続し、顧客取引の機会喪失や企業評価の失墜を防ぐためのものとなります。

現在、中小企業はどのようなBCPの対応をとっているのでしょうか。帝国データバンクが2021年5月に行った調査(※)によると、 BCP を策定している大企業の割合が32.0%であるのに対し、中小企業の場合はわずか14.7%にとどまっています。

(※) 株式会社帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021年)」

策定していない理由としては、「中小企業の場合は資金調達、コスト面を含めて対応が難しい」、「BCP の必要性は理解しているが、従業員があまり多くない企業でどのレベルのまでのBCP の策定が必要なのか分からない」という声があります。まとめると、コスト面が高いこととノウハウが無いことが、BCPが進まない大きな原因となっているようです。

優先して整えるべきは「従業員の安否確認」

BCP策定を進めるには、平時から災害発生時の準備を進めておくことや、経営層や従業員まで企業全体にBCPの意識を浸透させておくことが大切です。とはいっても、今までBCPに取り組んでいない企業が一朝一夕にできることではありません。まずは、自社にとって一番必要なものから優先し、できる範囲から策定を進めていくべきでしょう。

BCPの第一歩は、従業員の安否確認の方法を事前に定めておくことです。災害後も従業員とその家族が安全であり、従業員が勤務できる状況であることが確認できれば、事業継続のための指示もしやすくなります。

事業中断リスクに備えた実施・検討内容

(※)株式会社帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021年)」を基に編集部で作成

しかし、もし電話やメールで安否確認を行う場合、担当者は架電/メールの送信と受信/集計といった作業が発生してしまうことになります。災害時に電話回線が混雑している場合は、時間のロスになってしまう恐れもあります。

こうした場合に活用したいのは、自動であらかじめ登録した宛先に安否確認メールを一斉配信し、返信されてきた回答を自動集計するサービスです。回答のない従業員へは、自動で繰り返しメールやスマホへプッシュ通知を行う機能も利用することで、担当者の負荷を大きく減らすことができます。素早い対応ができれば、よりスムーズな事業再開につながります。

「停電」でもビジネスは継続できるのか!?

このほかにも、「停電」は事業継続のリスクとなりえます。

停電は東京電力管内のみでも年間約2,100件発生しています。対策として、無停電電源装置(UPS)で行っている事業者もあるかもしれませんが、UPSはPC・サーバーなどのデータ保護(スムースなシャットダウン)を目的としているため、停電後も事業を継続したい場合には不十分です。

事業内容によっては、停電が致命的になる場合もあります。たとえば、介護・福祉施設での管理者用PCや吸痰機、ミキサー、医療・薬局などのレセプトPCや電子カルテは、電源供給がないと使用できません。一般企業でも、通信機器(OUN、ルーター等)などが機能しなくなれば、事業再開まで時間がかかってしまうでしょう。

停電時でも業務を継続するためには、蓄電池のような、継続的な電源供給装置が必須です。最近では小型で大容量、かつ導入しやすい価格帯のものが出てきているため、BCP対策の一環として、蓄電池を準備しておくのも有効です。

自社のビジネスが、いつ、どういったタイミングで自然災害の影響を受けるのか。そのことを事前に予想するのは簡単ではありませんが、被害を受けてから動き出すのでは、すでに手遅れです。今回紹介したようなBCP対策を平時から考えておくことが、有事の際もビジネスへの悪影響を最小限にとどめることができるでしょう。