老人ホームや障がい者施設は消防設備点検だけで『命』を守れない

消防設備が設置されている施設は、消防設備点検をしなければいけません。また所有者は、その点検結果を所轄の消防本部へ報告しなければいけない義務があります。消防設備点検は10年に1度したら良いものではなく、法律に基づいて定期点検を行うことが重要です。今回は、消防設備点検の重要性について理解してもらいます。

1. 障がい者施設や老人ホーム等の介護施設、病院の消防点検

消防設備点検の種類と期間

消防設備点検:機器点検とは…消防用設備等の適正な配置、損傷の有無などを外観から点検します。また、その機能について、外観から又は簡易な操作により判別できる事項を確認すること。6ヶ月に1回

消防設備点検:総合点検とは…消防用設備等を作動又は使用することにより総合的な機能を確認します。1年に1回

※特殊消防用設備にあっては、設備等設置維持計画に定める点検の期間ごとによる

(消防法施行規則第31条の6・平成16年消防庁告示第9号)

(消防法施行規則第 31 条の6第3項1号,2号)

2. 消防設備を設置するだけでは『命』を救えない

2006年に長崎県にて、認知症の高齢者老人ホームで深夜に火災が発生し、7人の方が亡くなるという大規模火災が発生しました。この火災の影響もあり、翌年の2007年には、消防法が改正され、2009年の4月から施工されることとなりました。

被害が大きくなった原因は以下のとおりとされている。

火気管理が適切でなかった

・火災発生後の職員の対応が適切ではなかった

職員の仮眠場所が適切でなかった

避難訓練が実施されていなかった

・消防署への通報に時間がかかっ た

・火元と考えられるソファが防炎加工品ではなかった

・居室の窓が腰窓であった

火災報知設備がなかった

スプリンクラーが設置されていなかった

・住宅地から離れた立地であったため近隣の協力が得られなかった

消防水利(公設消火栓)までの距離が遠かった 等

上記の要因からもわかるように、消防設備を設置したから安全とは言えません。消防設備の設置、消防設備の定期点検、消防訓練の実施の3つの対策ができて初めて安全と言えるようになります。

現在は、消防法の改正によって、今回のような小規模老人ホームの場合であっても防火管理者を選任し、それぞれの施設に適した消防設備も設置をすることが義務付けられました。入所者および、そこで働く方々の安全を守るために改正されたものとされています。

1.消防設備の 設置義務変更点

前述にてご紹介をした消防法の改正によって、各消防設備の設置義務の基準が下記のように変更になりました。

・改正前

スプリンクラー設備

・延べ面積1000㎡以上の施設

消火器

・延べ面積150㎡以上の施設

自動火災報知設備

・延べ面積300㎡以上の施設

火災通報装置

・延べ面積500㎡以上の施設

・改正後

スプリンクラー設備

・延べ面積275㎡以上の施設→全ての施設(平成27年改正)

消火器

・すべての施設

自動火災報知設備

・すべての施設

火災通報装置

・すべての施設(平成27年改正により自火報の連動が義務)

高齢者の方や病気をお持ちの方、障がいのある方が出入りする施設は、火災の早期発見迅速な初期消火確実な早期避難が必要です。そのため、面積による制限がほとんどなくなり、すべての施設に消防設備を設置されるようになりました。※(6)項ロは下記参照

2. 防火管理者の役目

防火管理者というのは、老人ホームや病院などといった多数の人が利用する建物において火災等による災害を防止するため、防火管理についての消防計画を作成し防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に実行していく人のことを指します。なお、防火管理者として業務をおこなうには資格が必要になります。

この防火管理者は、改正前の消防法においては小規模施設は対象外となっていましたが改正後の消防法では、たとえ小規模施設であっても防火管理者を選任しなければならないようになりました。

 3. 防火管理者の主な仕事

防火管理者においては、下記のような業務が課せられています。

・消防計画の作成および届出

・消火および通報と避難訓練の実施

・消防設備の点検および整備

・火気の使用および取り扱いに関する監督

・避難および防火上必要な構造と設備の維持管理

・収容人数の管理

・その他防火管理をするうえで必要な業務

防火管理者の資格

防火管理者の資格取得条件は以下のようになっています。

・都道府県知事、消防長、総務大臣の登録を受けた法人が実施をする防火管理者資格講習を修了した者

・防火管理者として必要な実務経験を有する者

管理権原者とは?

管理権原者とは、防火管理者の上司にあたる防火管理の最終責任者になります。防火管理の必要な施設の管理についての権原を持っている人を管理権原者といいます。より分かりやすく解釈すると、施設の代表者経営者がそれにあたります。

4. 消防訓練

老人ホーム等の施設における消防訓練についても規定が設けられていて、この消防訓練については前述にてご紹介をした防火管理者の仕事となります。

・防火管理者は消防訓練を年に2回以上、実施をしなければならない

・消防訓練をおこなう場合は、事前に消防機関に連絡をしなければならない

消防訓練の流れ

消防訓練の流れについては、大まかに下記のような流れとなっています。

1.施設内の人に対して火災が発生したことを周知

2.火災が発生した場所の逃げ遅れの確認及び避難

3.初期消火の実施と防火扉の閉鎖

4.避難介助及び誘導

5.消防機関への通報

6.入居者の安否確認

7.消防車の交通誘導及び状況報告

このような流れでより実火災に近い消防訓練をおこない、事前に避難の流れについて確認をしておくことが非常に重要です。特に老人ホームなどの場合だと、高齢者や病気がある方、障がいがある方も多いため予測できない事態が起こる可能性も十分に考えられます。そのような不測の事態も考慮して、定期的に消防訓練をおこなっていくことが大切です。

5. 最後に

記事の冒頭でもお話をさせて頂いた通り、高齢者の方や病気をお持ちの方、障がいのある方が出入りする施設においては、消防設備等の充実は非常に大切です。しかし、設備を充実させただけでは、火災時の対策としては不十分です。ハードとソフトのどちらか一つを点検すれば良いのではなく、両方対策をして初めて災害から命を守ることができるでしょう。また、老人ホームなどで実際に過ごしている方々の災害に対する心構えや避難方法、初期消火訓練、通報訓練、誘導訓練等実践に近い対策が重要になってきます。

助かる命を助けるために、ハードとソフトの両立した消防点検なら元消防士が代表のVITAにお任せください。

今よりコストを上げたくない方、消防設備点検を安くしたいけど、充実させたい方必見です。

(対象地域:大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、東京、千葉、神奈川、埼玉)

※用途別消防設備 項目説明

6項イ

病院、診療所又は助産所

6項ロ

老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入居させるものに限る。)、介護老人保健施設、救護施設、乳児院、知的障害児施設、盲ろうあ児施設(通所施設を除く。)、肢体不自由児施設(通所施設を除く。)、重症心身障害児施設、障害者支援施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものに限る。)、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の二第四項若しくは第六項に規定する老人短期入所事業若しくは認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第五条第八項若しくは第十項に規定する短期入所若しくは共同生活介護を行う施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものに限る。ハにおいて「短期入所等施設」という。)

6項ハ

老人デイサービスセンター、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センター、有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入居させるものを除く。)、更生施設、助産施設、保育所、児童養護施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設(通所施設に限る。)、肢体不自由児施設(通所施設に限る。)、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター、身体障害者福祉センター、障害者支援施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものを除く。)、地域活動支援センター、福祉ホーム、老人福祉法第五条の二第三項若しくは第五項に規定する老人デイサービス事業若しくは小規模多機能型居宅介護事業を行う施設又は障害者自立支援法第五条第六項から第八項まで、第十項若しくは第十三項から第十六項までに規定する生活介護、児童デイサービス、短期入所、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援若しくは共同生活援助を行う施設(短期入所等施設を除く。)

6項ニ

幼稚園又は特別支援学校