そもそも非常用発電機とは?

昨今、多くの企業が注目している非常用発電機。
非常用発電機とは、予期せぬ事故や災害が発生し、建物内への電力供給がストップしてしまった場合に稼働して電力供給を行うものです。

非常用発電機の必要性

大規模な地震や火災によって停電が起きてしまった場合、防災設備や人命を救助する設備が稼働できなくなると、大変なことになってしまいます。
緊急事態が起きた時でも防災設備を稼働させられるように、条件を満たす建物においては、消防法と建築基準法によって非常用発電機の設置が義務付けられています。
また、昨今では法令による設置義務がない建物でも緊急事態が起きた時に備え、保安用として非常用発電機の導入を検討している企業が増えています。

BCP対策に伴って非常発電機を導入する企業が増えている

非常用発電機の導入の根幹にあるのはBCP対策です。
BCPとは、企業が自然災害をはじめとする緊急事態に遭遇しても、事業を早期に復旧できるために備えておく「事業継続計画」のことを指します。

BCP対策がされていないと、緊急事態には長い間事業が停止してしまうことが考えられます。事業停止期間が長ければ長いほど企業への負担は大きくなってしまい、最悪の場合は廃業に追い込まれるケースもあります。

2011年に発生した東日本大震災において、被災地では人材の損失や復旧に時間がかり、多くの企業が事業縮小せざるを得ない状況に陥ってしまいました。
東日本大震災後、BCP対策の重要性に注目が集まり、多くの企業で策定が進められるようになったのです。

考えられるリスクに備えて、先手を打って決まりや設備を整えておくBCP対策。平成 22 年 6 月に閣議決定された「新成長戦略」にて、政府は2020年中に大企業での策定率100%、中堅企業50%を目指しています。非常用発電機は、BCP対策における手段のひとつとしても有効です。

消防法や建築基準法などの法令で必要とされている非常用発電機以外にも、自主的に導入するケースが増えているのは、「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金(※1)」など、導入にあたって国からの補助金が用意されるようになった背景があるからです。

※1:災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金
https://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/2002/200214c/

BCP対策に手軽に活用できる機器

非常用発電機の導入には、設置場所や費用など考慮しなければならない点も多く、手軽に導入できるものではありません。

手軽にBCP対策を行いたい場合には、家庭用蓄電池やポータブル式蓄電池を導入するのもひとつの手です。緊急事態が起きた時に動かしたい機器が少なければ家庭用蓄電池やポータブル式蓄電池でも十分にまかなうことができます。

業務用の蓄電池は大容量ですが、その分費用も高額になってしまいます。家庭用蓄電池なら、費用を抑えて、手軽にBCP対策をすることが可能になります。

非常用発電機の役割

非常用の予備電源として使われる非常用発電機ですが、消防法や建築基準法など、
法令によって義務付けられて設置をする場合と、保安のために自主的に設置する場合の2通りに分かれます。

法令による設置

スプリンクラーや消火栓ポンプ、排煙装置などを稼働させることができないことを防ぐ。人命を守るために稼働させる、防災設備に対して電力供給を行う。

自主的な設置

冷凍や冷蔵商品を扱う店舗、ビルの空調や照明、養殖場で使うエアポンプなど、保安設備に電力供給を行う。

非常用の予備電源として使われる非常用発電機ですが、消防法や建築基準法など、
法令によって義務付けられて設置をする場合と、保安のために自主的に設置する場合の2通りに分かれます。

非常用発電機の仕組み

非常用発電機には、ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンの2種類があります。
それぞれのメリットとデメリットを知っておきましょう。

種類メリットデメリット
ディーゼルエンジン非常用発電機・機種が豊富・燃料単価が低い・本体が安価・メンテナンスが簡単・発電効率が良い・ラジエーターが必要・振動が大きく騒音・排煙が多い
ガスタービン非常用発電機・省スペース・冷却水不要・低振動で静音・排煙が少ない・本体が高額・燃料が高単価・発電効率悪い・吸排気風量が大きい・メンテナンス費用が高額

発電の仕組みは、ディーゼル式、ガスタービン式のどちらも同じで、
磁石とコイルの相対運動によって、電流が流れる現象を用いて機械エネルギーを電気エネルギーに変換しています。

非常用発電機の点検の必要性

NECESSITY

緊急時の備えとして重要な非常用発電機ですが、東日本大震災の際には、
整備不良によって使用できなかったケースが全体の41%
さらに途中で異常停止したものが27%もあったことが明らかになっています。

経年劣化や設置環境の変化など、さまざまな要因によって正常に動作しないケースもありますが、非常用発電機は常に運転させておくものではないので、点検をしなければこうした異常に気付くことが難しいです。

多くの資金を費やして非常用発電機を導入したとしても、いざという時に正常に稼働しなければまったく意味のないものになってしまうでしょう。
もしもの時に安心して非常用発電機を使用するためには、定期的な点検は必要不可欠なのです。

非常用発電機は電源を入れるだけでは発電されることはありません。消防法により、点検時には30%以上の負荷をかけて正常に動くか確認することが決められていましたが、負荷運転による定期点検を高額な費用がネックとなり、これまで実施されていない施設も多かったと言われています。
2018年6月1日より自家発電設備の点検方法が改正されたことで、非常用発電機の点検方法も変更になりました。
非常用発電設備は消防法の他に、電気事業法や建築基準法などの法令によって点検が定められています。
それぞれの法令が定めた点検基準について表で詳しく見ていきましょう。

電気事業法消防法建築基準法
対象設備事業用電気工作物に該当する
自家発電設備
消防用設備等の非常電源として設置される自家発電設備
自家発電設備
建築設備の予備電源として設置される自家用発電装置
点検基準保安基準で定める点検等の基準・非常電源(自家発電設備)点検基準(告示)・非常電源(自家発電設備)点検要領(通知)半年点検(機器点検)および1年点検(総合点検)を実施する。・国土交通省告示第285号「排煙設備」、「非常用の照明装置」または「給水及び排水設備」により実施する。
点検記録非常電源(自家発電設備)
点検票(半年点検、1年点検の結果を記載する)
「排煙設備」、「非常用の照明装置」、「給水及び排水設備」の該当する検査結果表に記載する。
点検報告・消防用設備等点検結果報告書「非常電源(自家発電設備)点検票」を添付する。・特定防火対象物に設置される消防設備等では1年に1回、非特定防火対象物に設置される消防設備等では3年に1回、点検結果報告書を所轄消防機関に提出する。定期検査報告書により、概ね6ヵ月から1年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期に報告する。

引用:内発協ニュース

非常用発電機の設置義務について

非常用発電機の設置については、消防法と建築基準法によって設置が義務付けられています。
どのような建物が該当するのか、法令ごとに設置基準を紹介します。

消防法

設備基準消防用設備を備える、延べ床面積1000平方メートル以上の病院や商業施設、オフィスビル。

非常用発電機が必要となる主な消防用設備

  • ・火災報知器
  • ・スプリンクラー
  • ・誘導灯
  • ・非常用エレベーター

など

建築基準法

設備基準以下の防災設備を有している建物。

主な防災設備

  • ・非常用の照明装置
  • ・非常用の進入口
  • ・排煙設備
  • ・非常用のエレベーター
  • ・非常用の排水設備
  • ・防火戸・防火シャッター
  • ・防火ダンパー等・可動防煙壁

など

非常用発電機の導入までの流れ

BCP対策のために非常用発電機の導入を決意された方もいることでしょう。非常用発電機を導入する際には、まず第一に、非常時にも動かしておきたい機器を絞っておくことや、それによってどれくらいの電力が必要になるのかを検討する事が必要です。非常用発電機はどこに設置するかなど、設置場所の検討をします。また、非常用発電機を購入するのかリースで済ませるのかなど、予算の兼ね合いを見て選びましょう。
非常用発電機の稼働音などが近隣の迷惑にならないように考慮するなど、専門家との相談が必要です。

まとめ

SUMMARY

電気が止まってしまうことは、企業の事業継続に大きな打撃を与えます。いち早く現状復帰をするためには、非常用発電機の導入は必要不可欠だと言えるでしょう。導入を行った場合には、いざという時安全に稼働するために、定期的な点検を行う事が大切です。