自家用発電設備とは?保安用、防災用の違い
自家用発電設備とは?消防法の定めと保安用と防災用の違い
自家用発電設備の必要性
東日本大震災の被害及びそこからの復旧活動は記憶に新しいでしょう。「電気はあってあたりまえ」の状況は当たり前のことではないということを再認識させました。
その教訓として電力の安定供給は重要課題と位置付けられました。法律による規定で建物に設定自家用発電設備を設置したり、個人用では自家発電として意識されています。
万がいち、何か災害などが起きた際に電力会社からの電力供給が途絶えたとしても、最低限の電力供給を自力でできるようになる(BCP:事業継続計画)のが、自家用発電設備です。
自家用発電設備とは何か?その用途
自家用発電設備は「常用」と「非常用」に分かれています。非常用自家用発電設備にはさらに防災用と保安用に分かれています。保安用については、常用防災兼用発電設備ともされます。
常用発電設備とは
建物や施設の電力使用のピークカットや熱エネルギーを作るときに電気エネルギーを得るシステムとして常用電源と並列もしくは独立して常用運転される設備になります。
非常用自家発電設備とは
非常用自家発電設備については非常用予備発電装置とは?
の記事で紹介しています。電源確保のための非常用自家発電は先ほども紹介しましたが、I 防災用発電設備」と「常用防災兼用発電設備(保安用とも)」があります。
防災用発電設備とは、「建築基準法、消防法による防災電源確保」の用途として使用される発電設備です。
常用防災兼用発電設備とは、「通常時は常用発電として運転し、常用電源が停電したときに防災電源や保安設備の電源を確保」する用途で使用される発電設備です。
自家用発電設備の種類(分類)
自家用発電設備の種類
☝で見てきた常用発電設備、非常用自家発電は、自家用発電設備の用途別に分けたときの分類になっており、内燃機関については自家用発電設備の種類に当たります。
内燃機関とは?その仕組み
☝ででてきた「内燃機関」がどういったものか押さえておきましょう!
内燃機関とは、英語のinternal-combustion-engine(インターナル・コンバッション・エンジン)を訳したもので、燃焼ガスを直接的に作動する流体として使用することで熱を発生させエネルギー変換する仕組みを持つ機関のことです。燃焼ガスを使って機械仕事を得る原動機ともいえるでしょう。
これに対して外部機関とは、蒸気タービンなどのように作動する流体の性質が全く異なるものを使用する原動機のことを指します。
この内燃機関は電気エネルギーを得るための稼働方法の一種で、内燃機関に発電機を連結し、回転エネルギーで電気エネルギーを得る方法の他に、回転エネルギーを使用しないで燃料電池を使った電気エネルギー生成方法もあるのです。
☝でみてきたように、内燃機関には方式により2種類に分かれていました。「自己点火方式」と「外部点火方式」の2種類ですね。
自己点火方式には圧縮点火方式が使われていて、おなじみのディーゼルエンジンやガスエンジン(液化燃料)があります。さらに、外部点火方式には、「火花点火」と「バーナー点火」の2種類の方式があり、それぞれおガスエンジン(都市ガス)、ガソリンエンジン、ガスタービンがありましたね。
ディーゼル機関(エンジン)とは?
ディーゼルエンジンとは
先ほどもみたように、ディーゼル機関は自己点火方式に含まれる設備になります。
ディーゼルエンジンは、燃料に軽油、重油を使用するエンジンです。軽油はほとんどがディーゼルエンジンに使用されることから「ディーゼル燃料」とも呼ばれます。ディーゼルエンジンは軽油や重油を使用することから環境負荷が高く環境に悪いともされることがあります。
ディーゼルエンジンの往復運動は、常用発電では750rpmの低速があります。非常用発電では750~900rpmの中速のものや3,600rpmの高速のものがあります。
回転速度が速い方がより電気エネルギー生成速度が速くなっています。
燃料が石油であるためこれを圧縮して使用するために圧縮点火方式がとられています。
ディーゼルエンジン(機関)のメリット
- 燃料代が非常に安い!
- ガソリンの3分の1の燃料経費で済む。ディーゼル燃料がそもそもガソリンより安く、燃料消費率もいい
- 安定性が抜群!
- 周囲の空調環境に出力が調整されてしまうことがないから非常用でも安定的に電力供給ができる。いざというときにエンジンがかからないという事態を防げる
- 比較的ローコスト!
- とはいっても安くて一台100万円くらいします。オフィスビルなどでもよく採用されています。
ディーゼルエンジンエンジン(機関)のデメリット
- 騒音が大きすぎる、
- ディーゼルエンジンが往復運動により電気エネルギーを取り出すので、運転時の騒音がどうしても大きくなってしまう。さらに振動も激しくなってしまう
- 管理が大変、
- 非常用であれば特にですが、最低でも月に1回の点検と管理運転、試運転が必要になってくる。頻繁に使う場合は燃料の鮮度などの管理も行う必要がある。水式ボンベを据付たり、冷却装置を据付たり、面積を確保したりと設置のデメリットもあります。
- 環境に負荷がかかる、
- ディーゼルエンジンは燃焼空気の排煙の中に黒鉛が排出される仕組みになっていて、これが環境的には悪影響を及ぼす。ですが、近年エコカーなどに採用されているクリーンディーゼルも登場しています。
ディーゼル機関のメリット・デメリットを見てきましたが、次にディーゼル機関と同じく非常用として採用されることのあるガスタービンについてを見ていきましょう。
ガスタービンとは
ガスタービンとは?特徴や仕組み
ディーゼル機関が燃料を軽油と重油としていたのに対し、ガスタービンは高圧ガスを燃料に使用しています。
点火方式もディーゼル機関が自己点火方式であったのに対してガスタービンは外部点火方式をとっています。
その仕組みとしては、「気体(ガスなど)を圧縮機で圧縮した後にバーナーなどを使用し点火します。そのあと点火により定め生じた高温かつ高圧のガスタービンを回します。ガスタービンは毎分数万回もの回転数で運動できるので、減速装置を介して発電機に回転エネルギーを伝導しているのです。」
つまりは、ガスタービンの仕組みは往復運動機構ではなく、回転運動機構で運動しているのです。
ガスタービンのメリット
- 安定性抜群!
- 回転運動をしているため、軽負荷運転でも動作が可能で、良好な電力かつ発電電力の安定性が高い。機器本体もまた、コンパクト
- ガスタービンコンバインドサイクル発電システム(GTCC)の登場!
- コンバインド発電システムとはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた二重の発電方式のことで、圧縮空気の中で燃料を燃やすことでガスを発生させその圧力を通して発電するシステムです。これにより火力発電以上の電力を生成することができるのです。
- 環境負荷が小さい
- 燃料を空気と結合させて完全燃焼するので排気に含む一酸化炭素などを軽減できます。これにより黒煙排出もありません。ですので、環境にやさくなっています。
ガスタービンのデメリット
- 燃料消費量が大きい、
- 機器本体自体はコンパクトなのですが、基本的に燃料タンクが大きく、その分燃料消費量が大きい。ですので、エネルギー変換効率はどうしても悪くなってしまいます。GTCCで効率性の壁を越えられるかもしれませんが。
- 回転バランスの制御が難しい、
- ガスタービンには高価な耐熱性材料が必要で、それと回転バランスの制御が非常に難しくなっています。
- 排気方向に注意する必要性がある、
- ディーゼルエンジン以上に高熱な処理をガスタービンは行っています。それゆえに煙道から放出される排気ガスが近くの「木」などの可燃物に燃え広がると火災が発生してしまうおそれがあります。なので排気方向には十分な注意を払う必要があります。
ここまで、内燃機関のディーゼル機関とガスタービンについてを見てきましたが他にも自家用発電設備の種類はあります。
その他の自家用発電設備の種類
比較的大きな自家用発電設備から20A程度の小さな発電機まで幅広く自家用発電設備は存在しています。
震災などの災害リスクの回避の意識が高まってきた日本では「自家発電」も電力供給において重要な役割を果たしているのです。いわゆる「家庭用小型発電機」と呼ばれる自家用発電設備があります。
家庭用小型発電機はガソリンやプロパンガスを使用します。
おおよそ一台1万円から5万円代で販売されています。
さらに、最近よく見かけるかもしれません。屋根の上のソーラーパネルを。これも自家用発電設備で常用にも非常用にも電源となるすぐれものです。
まとめ
以上、自家用発電設備の用途とその種類についてを見てきましたが、電力という生活を送るうえで非常に大事なものが安定的に供給できているのはこうした設備が稼働しているからなのです。
非常時の際にもきっとうまく稼働して、不安を払拭させてくれるでしょう。