タワーマンションの災害時の対策に関する質問主意書
最近タワーマンションや6600Vの高圧の建物の負荷試験依頼が多く続きましたので、
過去に国会で取り上げられた質問と答弁を掲載いたします。
平成三十一年二月十四日提出
質問第四五号
タワーマンションの災害時の対策に関する質問主意書
提出者 柿沢未途
タワーマンションの災害時の対策に関する質問主意書
東京都内のベイエリアをはじめ、大都市圏を中心に、高さ六十メートル超の建築基準法上の超高層建築物に該当する集合住宅、いわゆるタワーマンションが急速に増えている。高さ六十メートル超となるとおおむねフロアー数では二十階以上となるが、これらのタワーマンションにおいて、地震や風水害といった災害時に必要とされる対策は、一般的な戸建住宅の住民が取るべき備えとは大きく異なるものになると考えられる。
そこで以下、質問する。
一 全国において上記のようなタワーマンションに該当する集合住宅が何物件あり、本年二月一日現在で、何世帯が居住しているか、政府の承知するところを示されたい。
答弁
お尋ねについて把握していないため、お答えすることは困難である。なお、国土交通省においては、平成二十九年十二月末日までに完成した分譲マンション(地上階数三以上である共同住宅のうち、分譲住宅であって、その構造が鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造であるものをいう。)の総戸数は約六百四十四万千戸であると推計している。
二 これらのタワーマンションの立地する大都市圏においては、大規模自然災害の発生時においても住民の避難者全てを収容できるだけの避難所のキャパシティはなく、タワーマンションの住民については、災害時においても自宅での生活を継続してもらう、いわゆる在宅避難を基本方針とする自治体が多い。一方、東京都の地域防災計画ではライフラインの復旧にあたり、電力は七日間、上下水道は三十日間の期間内での復旧を目指している。停電や断水が続く中で、タワーマンションにおける在宅避難の住民生活の継続には主にどのような困難があると考えられるか。
答弁
一般論として、マンションにおいて御指摘の「在宅避難」を行う際には、停電によりエレベーターの機能が停止した場合に階段の昇降を行う必要があること、断水により水洗便所の機能が停止した場合に排せつ物の処理が滞ることなどの困難が生じ得るものと考えられる。
三 タワーマンションには非常用発電機の設置が義務づけられているが、これは火災時のスプリンクラー等の消火設備や非常灯等の照明や避難のための非常用エレベーターの運転等のために設置されるものであり、大規模災害時の一般用のエレベーターの運転継続のために設置されるものではない。加えて、非常用発電機の燃料の備蓄量は消防法の規制により制限されており、数時間の運転で燃料切れとなり止まってしまう。ほとんどのタワーマンションは現状このような状態にあると考えられるが、それで大規模災害時に住民が在宅避難を継続する上で支障はないと政府は考えているのか。
答弁
御指摘の「在宅避難を継続する上で支障はない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、御指摘の「在宅避難」に伴う「支障」については、二についてでお答えしたとおりである。
四 東京都地域防災計画の通りに大規模災害時に停電復旧に七日間を要した場合を想定すると、タワーマンションで何日間もエレベーターが動かない状態での在宅避難を強いられる事になる。エレベーターが止まるだけでなく、停電によりポンプが動かず水も出ない、トイレも流れない事態に陥るタワーマンションが多いと考えられる。このような事態に陥るリスクを放置したまま大規模災害時の在宅避難を求めているのは、タワーマンションの住民にとって過酷な要求であり、非現実的と考える。タワーマンションにおける長期停電のリスクに対応する何らかの改善措置が必要であると考えるが、政府の見解如何。
答弁
御指摘の「在宅避難」を行う際の「長期停電のリスク」への対応については重要であると考えており、防災・減災に資する施設の容積率の緩和を行う観点から、平成二十四年に建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)を改正し、自家発電設備を設ける部分等の床面積は、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないこととしたところである。
五 平成二十七年一月十七日、東京都港区の芝浦アイランド地区において、非常用発電機に使えるA重油等を貨物船等に給油する小型の燃料タンカーを接岸させ、水辺に面したタワーマンション・ワールドシティタワーズ(四十二階建て、二千九十世帯)の非常用発電機に九十キロリットル(七日間分に相当)の燃料をタンカーからホースで直接供給する訓練が行なわれた。訓練の成果を受けて、大規模災害による長期停電時に備えて、タワーマンションをはじめとする集合住宅の非常用発電機に、船舶給油用の小型タンカーからの燃料補給を行なえる仕組みをつくるべきではないかと考えるが、政府の見解如何。
答弁
御指摘の「訓練」の詳細について網羅的に把握しているものではないが、御指摘の「船舶給油用の小型タンカーからの燃料補給」については、既に、震災時等に船舶から陸上の施設等に燃料を供給する場合の留意事項を盛り込んだ「震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等の安全対策及び手続きに係るガイドライン」(平成二十五年十月三日付け消防災第三六四号・消防危第一七一号消防庁国民保護・防災部防災課長及び消防庁予防課危険物保安室長連名通知別紙一)を示しているところである。
六 タワーマンションをはじめとする集合住宅の非常用発電機については、消防法の規定により、一年に一度、正常に作動するかどうか、点検を行なわなければならないものとされている。ところが消防法上の対象となる建築物の非常用発電機について適切な点検が実施されていない事例が多く指摘されており、実際に東日本大震災では非常用発電機の七割までが点検・整備の不足により正常に稼働しなかったとされている。とりわけ多くの住民が生活するタワーマンションで大規模災害時に非常用発電機が正常に作動しない事態となれば深刻である。タワーマンションをはじめとする集合住宅における非常用発電機の点検状況について実施率を示されたい。
御指摘の「非常用発電機」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)別表第一(五)項ロに規定する共同住宅において屋内消火栓設備等のために附置される自家発電設備(消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第十二条第一項第四号、第十九条第五項第二十号、第二十四条の二の三第一項第七号イ及びハ並びに第二十八条の三第四項第十号に規定する自家発電設備をいう。以下同じ。)及び建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)別表第一(い)欄(二)項に規定する共同住宅において非常用の照明装置のために設けられる自家用発電装置(非常用の照明装置の構造方法を定める件(昭和四十五年建設省告示第千八百三十号)第三第三号に規定する自家用発電装置をいう。以下同じ。)については、御指摘の「点検」の「実施率」を把握していない。
七 石油連盟では「災害などに備えて燃料を備蓄される皆様へ」として、非常用発電機の燃料備蓄について、燃料の劣化等による不具合を避けるため、軽油については六ヵ月、A重油については三ヵ月を目途として、備蓄燃料を使用するかまたは入れ替える事を推奨している。しかしタワーマンションをはじめとする集合住宅において、非常用発電機のための備蓄燃料を推奨の通りに使用したり入れ替えたりしているのは、コストの面から考えても、極めて少数ではないかと思われる。そうなると大規模災害時に非常用発電機を運転しようとした時に不具合が生じるリスクが否定できないが、このような非常用発電機の備蓄燃料について、タワーマンションをはじめとする集合住宅における取り扱い状況を政府として確認しているか。確認していないとすれば、今後は確認する必要があるのではないかと考えるが見解如何。
答弁
御指摘の「非常用発電機」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、自家発電設備については、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十七条の三の三の規定に基づき、共同住宅の関係者は、定期に、その延べ面積等に応じて、消防設備士免状の交付を受けている者等に点検させ、又は自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告することとされており、また、一定の自家用発電装置については、建築基準法第十二条第三項の規定に基づき、その所有者は、定期に、一級建築士等に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告することとされているところであり、政府として、これらの事項について確認は行っていないところである。